(商工会報原稿)

ネイチャーツーリズム

2005.02.23
鰍竄ワめの里社長
 秋本治 

 五ヶ瀬ハイランドスキー場のアクセス道路は、昨年の台風16号で土石流が発生して決壊した。このため今冬のスキーシーズンは災害復旧が間に合わず、とうとう閉鎖するというきわめて異常な事態となった。 そこで、あれこれ考えた末、スノーシュウによる「スノーハイキング」を導入することにした。スノーシュウとは、雪の中をよりスポーティに行動するため開発された洋風カンジキのことで、雪上スポーツをより手軽で安全に楽しむことができる。樹氷の中、雪上の道なき道を歩くことはきわめて快感だ。スノーシュウを履いて深雪のブナの森に入れば、九州では体験できなかったスノーハイクが楽しめるのではないかと考えたのである。

 さっそく、スノーシュウを入手した。が、スノーハイクを紹介するための映像や写真もない。そこでDMでスノーハイクモニターツァーを募集し、そこへ報道関係の方々をご案内した。こうして九州で始めてのスノーハイクの写真や映像が報道されることになったのである。これを契機にスノーハイクも伸びており、ガイドをしながら霧立山地の冬景色を楽しむ機会が増えた。

 冬の空気が澄んだ霧立山地からの眺望は素晴らしい。南は霧島の山まで遠望でき、北は阿蘇や九重、西に雲仙普賢岳、東に祖母、傾山など雪景色とともに冬山の魅力が凝縮している。ゲレンデから飛び出したようなスノーハイクは、今後のネイチャーツーリズムの一翼を担うものと思われる。災い転じて福となすことになれば幸いである。

 私たちは、都市と山村の交流を機軸に新たな産業を創出することを目指しているが、観光地や大きな人の動きがある地域と違ってすべて自ら開発しなければ何もないのだ。これまで、やまめの養殖をはじめ、スキー場の開発、霧立越トレッキングなどを推進してきた。

 近年は、99年に霧立山地固有種のキリタチヤマザクラを発見し種苗生産を行っている。年には、耳川の源流に落差75mの幻の滝を発見、以後毎年滝開きを行って観光開発を推進している。昨年は、ガゴが岩屋と化石の森を発見した。  ガゴとは、修験道に通じる言葉で、その昔、霧立山地で修験道が活躍していたと思われる岩屋群を発見したのである。修験道は、高い崖地の奇岩や深い谷間を行き交って修行をしていたのだ。まさに現代版のネイチャーツーリズムである。目下ガゴが岩屋は修験道コースとして開設を進めている。一帯は、宮崎県にはない珍しい植物群や動物の生態も観察できる神秘的な森である。

 化石の森は、地質図に記載されていない石灰岩層に巻貝の化石が多量に露出している路頭を発見したのである。この巻貝の化石は、国内でも非常に珍しくて研究者がいないのでよくわからないということである。これから専門的な調査が進むにつれて化石の名前の同定や新たな事実が分ってくるものと思う。自然は、じっと見つめていると突然見えるようになってくるものである。ネイチャーツーリズムは、ますます目が離せなくなってきた。