かわら版 「風」 
2001年9月1日号
第1巻 第4号 (通巻4号)  発行者 やまめの里 企画編集 秋本 治 五ケ瀬町鞍岡4615  電話0982-83-2326

議会情報
 9月の議会日程が決まりましたのでお知らせします。

9月7日(金)10時から本会議
(決算、補正、人事、条例改正など)
9月11日(火)10時から本会議
(議案に対しての質疑)
9月18日(火)10時から本会議
(一般質問)
9月20日(木)政務調査
9月25日(火)午後から本会議

 年4回の定例議会のうち9月議会は、平成12年度の決算が主要議題です。まだ議案資料は届いておりませんが決算の他に人事、補正、条例改正等の案件があるということです。
 日程の内容は、7日は提案理由の説明。11日は議案に対しての質疑、事案の委員会付託。18日は一般質問。25日が最終議会となります。
 筆者も9月18日(火)の一般質問で町の政策について質問する予定です。都合のつく方は是非傍聴に出かけてください。質問内容については、本誌の次号(9月15日号)でお知らせ致します。

 公民館長会で、議会の傍聴がしやすいよう夜に議会を開催できないかという意見があったと館長さんたちから聞きました。そこで議会事務局に問いましたところ、議運(議会運営委員会)は9月の議会では準備できないので次の議会で検討するということになったという返事がありました。
 8月は全員協議会も開催されておりませんので協議ができておりません。9月の全員協議会でこの件についての提案がなければ筆者からも提案したいと思います。


議員報酬
 議会事務局から「議員報酬の振り込みについて」という文書が17日に郵便で届きました。8月21日に口座に振り込むという通知です。議会事務局から報酬についての大まかな説明はありましたが手にしたのは始めてです。
報酬内訳は以下のとおりです。

8月分総支給額  194,000
控除額       73,550
差引き支給額   120,450
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差引き控除の内訳
議員共済     24,700
所得税       680
貯金       10,000
互助会費      3,500
全国議員互助会掛金 4,500
新団体補償制度掛金18,400
スポーツ安全保険  1,400
宮崎県国際連合会費 1,000
五ケ瀬町自衛隊
協力会会費     2,000
地方議会人購読料  4,720
議員手帳      500
会議ノート     650
略章        1,500
控除合計     73,550
 以上のように議員報酬の手取りは120,450円でした。この他、当初の費用として制服(作業着)などの支払が別途あります。また、ソフトボール大会用のユニフォームも必要とのことですが、前議員のユニフォームを譲り受けることが出きればこれを着用しても良いということです。
 議員報酬が高い安いは別にして、しかし、まあよくもこんなに控除があるものです。共済と掛金、貯金だけでも57,600円で報酬の約3割近い。全体では報酬の約4割が控除されることになります。こうした控除をもっと圧縮できれば議員報酬の引き下げも可能ではないでしょうか。
 こうした掛金は、3期12年以上勤めると退職一時金の他、年間報酬の3分の1を年金として受け取ることができるように定められ、老後の暮らしが保証されているようです。そういえば、長年議会人であった方のお家は立派で別荘などを持つ人がいるなあ。いえいえ、これは他町村の話しです。
 議会活動では、執行部に迎合して何もしなくて票さえ固めていれば老後が安泰なんて、選挙民はしっかり監視しなければなりませんぞ。議員の老後のための議会であってはなりません。


夏の成人式
 8月16日(木)、今年の成人式が町民センターでありました。今年の成人者は、昭和55年4月2日から昭和56年4月1日生まれが対象で85人が該当し、内63人が出席、成人証書の授与、記念品贈呈、町長式辞などが行なわれました。
 巷間では、成人式に若者が暴れるというニュースが報道されていますが、五ケ瀬の場合極めて静粛に粛々と行なわれました。それもそのはず成人者と来賓者がほぼ同数位列席して成人者を来賓が取り囲むような形で行なわれ、成人者の親御さんは来賓者の親戚や友人、知人ばかりという環境にあります。これが顔の見えるコミュニティというものでしょう。
 一人一人壇上で成人証書が手渡されるのですが、中には、照れ屋もいれば警察か自衛隊で訓練を受けていると見られるようなきびきびとした規律ある態度で受け取る人もいます。また、男性の茶髪やピアスも多く見受けられ、女性も思い思いの服装で精一杯自己主張しているように見えて、微笑ましく感じました。
 式典で一つ気になったことがありました。それは成人者一人一人の名前を敬称を略して読み上げ、壇上へ向かわせたことです。成人者ですからもう子供ではありません。一人の社会人として扱うといいながら一方では子供のように名前を呼び捨てにするというのは如何なものかと感じました。人権を尊重しなければならない筈の行政側が高圧的に映りました。皆さんはどのように思われますか。
 この成人式、以前は成人の日のある1月に行なわれていました。冬の積雪で参加が困難ということと成人式のための衣装購入など無駄な費用を節減するという二つの理由からです。
 こんにちでは、降雪量も少なくなりましたが特にスキー場ができてからは除雪対策はほぼ万全です。また、衣装はレンタルで済ますなど以前とは価値観が変わってきました。振袖は必要ないと自己主張できる人も増えています。
 こう考えると夏に成人式を行なう理由がなくなってきたのではないでしょうか。都市部に行った人たちは、その都市で既に1月に成人式を済ませた人も多いようです。その時、せっかくの成人式だからと人生の節目の思い出にレンタルで振袖衣装を楽しんだという話も聞きます。
 そうすると町の成人式は、二番煎じで気の抜けたものとなりはしないでしょうか。イベントは感動の高まりを誘わなければなりません。全国的に成人式が行なわれる季節の方が感動が高まるでしょう。また、五ケ瀬町は日本最南端のスキー場を持った町です。郷土の誇りとするスキー場でスキー体験と併せた成人式などもいいのではないでしょうか。
 いずれにしてもこれから議論しなければならないテーマです。皆さんのご意見をお寄せくださると嬉しいです。
老人ホームの起工式
 さる8月23日、特別養護老人ホーム「ごかせ荘」の起工式が大字三ヶ所10725番地1の旧町病院跡地でありました。敷地面積約5千u、建物面積約2千uで、鉄筋コンクリート1部2階建です。
 事業主体は、高千穂町で「雲居都荘」を経営している社会福祉法人高千穂天寿会で理事長は戸高久治氏です。総事業費は五億ニ千三百万円で事業費の半分は自転車振興会(競輪)の補助金、残りを五ケ瀬町が負担して建設されるということです。
 工事は、設計管理を(有)メイ建築研究所宮崎、建築主体工事を五洋建設株式会社、設備工事を株式会社九電工が請負ました。工期は、平成13年8月17日から平成14年3月31日となっています。
 建物の平面図を見ると、45m×51mの四角い建物で、建物中央にテラス付きの広い中庭があります。ここでは郷土芸能などのイベントが予定されているそうです。
 居室は、中庭を囲むようにして外側に面して配置されており、1人部屋14室、2人部屋2室、4人部屋8室で定員は50名、内ショートステイ5名です。4人部屋は、寝室が独立しており、部屋の中央に中廊下があって、他の人の部屋を通らずに外へ出られるような設計になっています。
 3月には完成ということですので完成したら是非1度見学に出かけてみてください。

町づくりのキ―ワード
コミュニティビジネス
 横文字で申し訳ありませんが、「コミュニティビジネス」のことを最近は「コミュニティエンタープライズ」とも呼ばれるようになり、日本でも地域振興の重要な視点として最近注目されるようになりました。
 先般その論文がmailで届きましたので掲載します。

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出張報告書(経済社会研究所)
(1):短期国外出張
(2):所内予算
作成日  2001/02/
件 名  英国におけるコミュニティ開発事例調査
報告者名 馬場健司(経済社会研究所)
出張先  コミュニティ開発基金,レスター大学,リバプール市役所,ストラスクライドコミュニティ開発公社ほか
出張目的  コミュニティビジネス,地域通貨(LETS; Local Exchange and Trading System),クレジットユニオンなど,様々な産業・地域コミュニティ活性化施策が複合的に実施されている英国における各主体を対象に情報収集を行い,日本の発電所立地地域などにおける産業・地域コミュニティ活性化の在り方に関する知見を得る.

概 要:
1. 英国におけるコミュニティ開発
Mr. Gabriel Chanan(Commyunity Development Foundatoin)
Dr. Colin C Wiiliams(University of Leicester)
Dr. Andrew McArthur(University of Strathclyde)

・英国のコミュニティ開発は,70年代より荒廃した都市地区における政府のプログラムとして確立された.その対象領域は,社会的疎外/参加(Social Exclusion/Inclusion),再生(Regeneration),雇用,活性化,教育,健康,その他様々なプログラムを含む広範なものとなっている.

・英国内のコミュニティ開発に関する調査研究,事業促進の支援を総合的に実施している,コミュニティ開発基金は,特にハンディキャップのある地域において,コミュニティ生活の有効性を高め,地域環境を改善し,住民が長期的な地域環境を運営していくことのできるよう,意思決定に参加させることを可能とすることをコミュニティ開発の定義としている.
・最近では,社会経済セクタ(Social Economy)の有効性が特に注目されている.これは,サードセクタ(Third Sector),ボランタリセクタ,コミュニティセクタなどとほぼ同義に用いられる言葉である.コミュニティ開発と同様に,社会的疎外/参加,再生,脱貧困(Anti-poverty),持続可能(Susutainable)などを目的とする活動全般を指しているが,若干より広い意味で用いられているようである.利益に動機づけられない,つまり,民間セクタでは不経済,公共セクタの義務を超えたサービスの供給を行う活動である.基本的にスモールビジネスであり,その資源や活動をハンディキャップのあるエリアやグループに向けるサービスセクタである.その元来の受益者は,失業者や低所得者層であり,貧困の軽減に貢献する.疎外されている人々を意義のある活動に参加させ,能力と環境を改善し,通常の経済活動に近づけるための重要な手段である.
・政府内では,環境・交通・地域省(DETR)をはじめとするいくつかの省庁にそれぞれのプログラムの担当部署があり,それらを,内務省コミュニティ活性化局(Active Community Unit of Home Office),内閣府社会的疎外局(Social Excluded Unit of Cabinet Office)などが調整し,推進の中心的役割を担っている.
・クレジットユニオン,コミュニティビジネス,LETSは,社会経済セクタ,或いはコミュニティ開発の構成要素として位置付けられるコミュニティ活動であり,前2者は,政府や自治体の支援が既に確立しているスキームであり,LETSの多くは未だ草の根的側面の強いスキームではあるが,徐々に公共セクタからの支援が確立されつつある.
・英国,或いはEU全体でもそうであるが,コミュニティ開発を巡るキーワードとして,社会的疎外/参加,持続可能,そしてコミュニティ関与(Community Involvement)が頻繁に登場した.日本での高齢化と,欧州での難民や失業問題といったようにその背景は異なるが,必要とされている政策のキーワードに大きな違いがあるわけではない.

2. 英国における地域通貨(LETS)スキーム
Ms. Ann Parnell Mcgarry(Brixton LETS)
Ms. Smita Shah(Leicester City Council / Naari LETS Project Team)
Ms. Mary Fee et al(LETSLINK UK & North London LETS)
Mr. John Mills et al(Liverpool City Council / LETS Development Team)

・LETSは,英国では80年代半ばに登場した.大別すると2つの流れがある.1つは,出現当初からの動きで,いわゆる環境主義者などによるイデオロギー的要素の強い草の根運動としてのLETS.もう1つは,行政(経済開発部門)が積極的に支援し,雇用創出,職業訓練を視野に入れた,コミュニティビジネス志向のLETSである.前者については,中流階級の単なるお遊びと批判されることもあったが,その有効性(雇用創出,コミュニティにおける社会資本の蓄積)が着目され,レスター市,リバプール市などまだ少数ではあるが,行政のコミュニティ経済開発活動の一貫として位置付けられるようになっている.現在LETSスキームの総数は,英国全体で400-500程度存在するといわれている.
・英国のLETSでは,サービスと商品の交換に地域通貨と国民通貨(ポンド)が併用されている.現行制度の下では,LETSで得た現金収入は課税対象であり,また,LETSにより失業手当などの資格基準を上回る収入を得た場合は手当が支給されないこととなっているため,LETSの対象の1つである貧困層が参加したがらない,という悪循環が生じている.そこで,リバプール市役所をはじめとする関心ある団体がワーキンググループを組織し,LETSで得る収入を課税対象や手当ての支給資格基準から免除するよう政府に提案を行っている.例えば,手当支給の資格基準を,現行の週5ポンド以下の収入から,年260ポンド以下の収入へと変えるなどである.社会保障大臣はこれに対して肯定的なコメントを発表するなど,状況は少しずつ変化している.しかし一方で,同大臣はタイムバンクスキームで得た時間クレジットは課税の対象とはならないこと明言しており,今後は国民通貨を使わないタイムバンクスキームが徐々に増加する可能性がある.
・タイムバンクとは,米国が発祥のタイムダラーと呼ばれるものの英国版である.このスキームでは,国民通貨を使うことなく,タイムクレジットのみでボランティア活動が展開されている.従って,市役所が支援するような財政基盤の有力なスキームを除いてLETSは徐々に減少し,これからは政府が支援しようとしているタイムバンク,或いはそれとの連携を進めているLETSスキームが徐々に増えるとの見方がある.
・日本でも類似するエコマネー,タイムダラースキームなどが既に40箇所程度で実施されているが,英国LETSとの違いは,日本では,国民通貨(円)と併用しているところが少ない,紙幣を発行している,雇用創出よりは社会資本形成に力点がある,などの点が挙げられる.

3. 英国におけるコミュニティビジネス
Ms. Terry Smith et al(Community Enterprise in Strathclyde)
Ms. Amanda McLean(Scottish Enterprise Glasgow)
Mr. Shaun Spiers(Association of British Credit Union Ltd)

・コミュニティビジネス(CB)という言葉は,既に古くなりつつあり,最近ではコミュニティエンタープライズ(CE)という言葉の方がより一般的となっている.これは,かつてのCBがコミュニティ経済開発活動を中心としていたのに対し,前述の社会参加,社会経済セクタという言葉の浸透と共に,その活動をより広く定義しようという意図の表れである.
・スコットランドの社会経済セクタは,約3,700組織,5万人の有給雇用者を抱えている.これはスコットランドのエレクトロニクス産業と同等である.その収入は約20億ポンド(3,600億円)であり,いくつかのハンディキャップのある地域では主要な雇用となっている.
・インターミディアリと呼ばれる支援組織が,社会的ケア,教育,健康ケア,住宅,失業対策としての経済開発や雇用創出に関する活動を行っている.創出される各企業は,最大で百名程度,多くは十数名程度のスモールビジネスであり,その成功率は,ある統計によれば,その40%は3年以内に消滅しているという程度である.その理由は,社会的目的を優先させるため,経済的目的を相対的に軽視していたからであるが,これを解決するため,インターミディアリが,ビジネスコンサルタントと提携したり,自ら専任スタッフを雇用し,最初にビジネスプランを練ってから,コミュニティを関与させていくというプロセスで進めるよう変化しつつある.※Enterprise(冒険的企業)、Intermediary(媒介者、仲裁人)
・CEiSは,グラスゴーを拠点とする社会経済セクタの活動支援を行うインターミディアリ組織である.社会的疎外の解決が目的であり,グラスゴー市役所,欧州地域開発基金から財政的支援を受け,グラスゴーの地域問題,インフラ再生を行う他の様々な組織と連携している.主な事業としては,コミュニティクレジットユニオン(CU)の育成,育児ケア,住宅,雇用創出,地区再生などを行っている.また,CEiSでは,事業計画,経営計画策定支援を行う専門のセクションに資格や学位をもつ専門スタッフを7名抱えており,彼らがビジネスコンサルティング,起業支援を行っている.こういった活動は,一般的な民間セクタの経済開発を支援する国の機関,スコティッシュ・エンタープライズの1支社であるSEGの活動領域とオーバーラップしつつあり,パートナーとして事業を進めている.
・CUは,共有債の所有を通じて,地理的なコミュニティだけでなく,企業内,業界内などでも組織される金銭面での協同組合である.全世界で100万人以上の参加者がいるが,コミュニティCUでは,メンバーから収集した資金をより貧困なメンバーへ低利で貸し出す事業が主となっている.CEiSでは,こういったCUを立ち上げ,育成支援することで,貧困者層,失業者層への能力開発と仕事の機会の提供を意図している.このため,CUのボランティアスタッフに適切なトレーニングを提供しており,円滑な運営のための側面的支援を行っている.
・日本でもCB/CEに相当するものは,これまでにも,地域づくり事業を実施する第3セクタ企業の設立などという形態で存在してきたといえる.最近では,都市部でもSOHO(Small Office/Home Office)の支援などを1つの目標とする第3セクタ,或いはNPOが増えつつある.そういう意味では日英の違いはあまり大きくないようにみえる.しかし例えば,CEiSでは,事業計画,経営計画策定支援に関する専門スタッフの例があるように,東京都三鷹市のSOHO CITY MITAKAプロジェクトでもそのような支援サービスを提供してはいるものの,全般的に,職業訓練や起業については,英国の方が日本よりも熱心に行っているような印象を受ける.

4. 所感
・発電所立地地域などにおける産業・地域コミュニティ活性化の基本として,昨今失われつつある電力会社の社会信頼を獲得することは重要である.以上で述べてきたように,英国でのLETSは,このような社会資本形成だけでなく,コミュニティ経済開発として位置付けられている.勿論,地域通貨が一足飛びに様々な合意形成に役立つとまではいえないが,最初の顔のみえる関係づくりには役立つと考えられる.そういったベースとなる関係を構築した上で,地域通貨を介して明らかとなった地域資源のうち,更にビジネスとして発展し得る可能性のあるものについては,コミュニティ事業として何らかの形で支援していく,といったシナリオも考えられよう.
・今回の訪問先は,大学,研究機関,地方自治体,公社,コミュニティ開発(地域づくり)活動家といった様々なレベルであったが,特に活動家は,これまでの国内での調査で得た感触と同様,洋の東西を問わずエネルギッシュであることに深い感銘を受けた.
・訪問先の1つであるコミュニティ開発基金は,これまで当所が培ってきた地域づくり研究の成果とオーバーラップするような研究を行っており,コミュニティ開発の評価手法に関しては,学ぶべき点が多い印象を受けた.今後は,行政評価指標に関する議論とも結びつけて研究の展開を図りたい.また,いくつかの訪問先で,日本人がコミュニティ開発関連で調査に来るのは珍しいとの話をされた.今後もこのような分野においても活発に研究交流を続けていくことが肝要と思われる.


町づくり先進地事例
 以下は、筆者が昨年訪れた青森県グリーンツーリズムフォーラムの参加リポート(県農業会議提出)です。
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平成11年度「地域興しマイスター・フォーラム」
平成11年11月21日
やまめの里 秋本 治
日時:平成11年11月17日〜19日
会場:青森県八戸市プラザホテル
視察地:青森県名川町、青森市三内丸山遺跡

T.名川町
 名川町は青森県の南東端にあり、年平均気温8.8°C、年降雪量108a(共に平成8年)の気候で、農業を基幹産業とする広さ83平方km、人口9,800人、一般会計の予算規模は52億(平成9年度)である。平成5年に国の第1次グリーンツーリズム推進モデル町に指定された。(本県五ケ瀬町とともに全国25箇所が指定された内の一つ)
 指定を受けた名川町は、青森県下1番のサクランボの生産地であることからサクランボをテーマに第5次振興計画を策定、「果樹とグリーンツーリズムの町」として町づくりに取り組んでいる。
 グリーンツーリズム関連施設は、
1.宿泊型体験実習館「チェリウス」(宿泊定員52人)
事業費563,243千円(農業構造改善事業:需要創造型)
利用者数46,869人(平成10年度)
運営:町直営
2.名川チェリーセンター(特産品販売施設)
事業費107,912千円(平成3年〜平成9年町単むつ小川原原発関連助成)
売上250,000千円(平成11年度)
運営:名川チェリーセンター101人会
3.ドライフラワーセンター
事業費35,000千円(原子燃料サイクル事業推進特別対策事業)
4.スパーク名川(ゲートボール等のスポーツセンター)
事業費331,000千円
5.南部芸能伝承館(南部手踊り発祥の地)
事業費632,120千円
などがある。
〇名川チェリーセンター
 ここで最も注目されるのは、「名川チェリーセンター」である。昭和61年に農家の婦人たちが特産品研究会を組織して特産の梅やリンゴのジュース加工を開発した。これを契機に町内各地で同様な特産品研究会が発足し、数々の加工品を開発したが販売施設が無かった。そこで、町は、電源開発関係の補助を活用して平成3年に「名川チェリーセンター」を建設した。
 この時この事業と平行して特産品研究会の婦人たちは、「名川チェリーセンター101人会」を組織した。会は、出資金3万円、運営資金2万円、計5万円を入会金として募集し当初86人で立ち上げた。その後、目標の100人となったが現在では参加希望者が増えているが100人を限度とすることにより品質を高めているという。
 販売商品は、特産のサクランボをはじめリンゴ、ブドウ、梅、柿、梨、桃、プラムなどの果樹とその加工品を主軸にしてその他の農産物と加工品、山菜、キノコ、山野草まで商品は実に100種を超える。加工は、各自でも行うが、公営加工施設の機械を使用して自由にわが家のブランドをつくっている。サクランボの季節には、1日の売上が3,000千円を超える。本年度の売上目標は四億円(一人400万円)という。
 この販売施設は、最近の公営による物産販売施設のような豪華金ぴかの施設ではない。規模は全く異なるが商品の展示や構成が市場を思わせるようなイメージである。一人分の展示スペースはプラスチック製籠のコンテナ2台として、上段と下段、或いは横2列といった具合に100人分のコンテナが整然と配置されている。そして半年に一回くじ引きで配置場所を変更しているという。
 商品の種類や値段は各自が自由に設定するフリーマーケット方式で、商品の入れ換えもすべて個人の責任に於いて行われる。本県各地に農家の無人販売施設が見受けられるが、ややこれに近い方式である。
 ここで注目されるのは、販売システムである。商品はすべて個人のバーコードによって管理され、商品1個毎に商品名と値段、生産者の住所、氏名、電話番号等を記録した統一様式のカードが付けられており、レジではこのカードを読み取り、そのカードの一部をミシン目から切り取って保存し、これに基づいて清算業務を行う。
 販売に当たるスタッフは、100人の会員が当番で数人ずつ交代でこれに当たる。月に1日か2日出勤するだけでわが家の生産物が年中販売できることになる。したがって人件費ゼロの運営である。
 100人という限定会員数も成功の大きな要因と思われる。例えば数十人では商品のアイテムが少なくなり小規模でマーケットの魅力に乏しいし、数百人にもなると管理が難しくなりそうだし、商品の品質低下を招くかも知れない。町の生産者の規模や商品アイテムから考えて100人としたのは卓見だと思う。また、100人の生産者間で競争意識が高まり、商品の開発や工夫の跡が見える。したがって品質も高い。設立当初から一人の脱落者もなく、むしろ今では入会したいという希望者が増え、第二のチェリーセンター設立論も出ているという。
 本県の無人販売施設の場合、商品の管理が出来ないことと、いたずらなどで70%程度の回収率と聞いた。無人販売の場合、衛生管理や販売施設に問題があり、極めて小さい施設のためマーケット性に欠ける。また、通常の物産販売では、各個人がそれぞれ出掛けて販売するケースが多いが労働の稼働率が悪く無駄が多い。また、公営の物産販売施設では、販売手数料と一部公費負担によって人件費を賄うが、機動性がなく生産者の意欲が高まるシステムでもない。
 このようなことから、名川町のチェリーセンターの民活による運営は、本県の農家や物産販売のあり方に重要なヒントを与えてくれるものである。

〇名川町のクリーンツーリズム
 名川町では、町内の専業農家兼業農家25世帯で「ながわホームスティ連絡協議会」を設立し、グリーンツーリズム推進モデル事業として中高生の農業体験修学旅行を中心にファームスティに取り組んでいる。
 体験内容は、リンゴの受粉作業、袋掛け作業、収穫作業など農家の作業を体験させるものである。募集は、南郷村、三戸町など周辺の4町村と共同で広域的に旅行代理店を通じて行う。日程は、兼業農家も多いため金土日の間に行うこととして1泊2日、費用は17,000円である。その内5,000円は、秋の収穫の際収穫物を宅配する費用としている。参加校の地域は、京都、大阪、神奈川などが多い。
 当初は一般にも呼びかけたが参加者が少ないので修学旅行誘致に乗り出した。修学旅行は、ホームスティだけが目的ではなく、いくつもの修学旅行の行程の一部に組み込まれたもので旅行コースの一部となっている。
 入村式では「なんでこんなことをしなければならないの」といささか不機嫌な生徒もいるが、翌日になると涙の別れがあるという。また、以前修学旅行に訪れて農業体験した生徒が社会人になって家族を伴って訪問し、家族ぐるみの交際に発展するケースもあるという。今後は、そば打ち体験なども予定しているそうである。
 体験農業は、都市の市民に呼びかけてもなかなか集まらないという壁があるが修学旅行に視点を当てたことがよかったものと思う。参考にすべきことである。
編集後記

 今月はいよいよ定例議会です。皆様にお知らせする情報も多くなります。

 この私設「かわら版」は14区民の皆様を対象に配布しておりますが14区以外の方にもお送りできますのでご紹介ください。郵送料として年会費千円のご負担をお願いしています。
投稿も歓迎します。皆さんの参加で紙面を充実させましょう。ぉ気軽に投稿ください。(治)