1999年 初日の出

元旦の午前5時30分、懐中電灯の明かりを頼りにうっすらと雪化粧した霧立越を登り、日肥峠付近で樹間から初日の出を拝みました。

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 きらめく星空の下、かしばる峠を越えてオタカラコウが群生するゴボウ畠まで車で上り、そこから霧立越に足を踏み入れる。気温は零下5°Cだ。風が強い。ゴォーッという不気味な山鳴りが聞こえる。風に揺れる樹木が擦り合う音であろうか、時折、ギィッギィッ、バキバキッという音が近くで聞こえる。

 懐中電灯の薄明かりに照らし出される歩道は、あちこちに落ち葉がもっこりもっこりと山をなしている。晩秋に落ち葉を踏みしめて歩いた道はこんなでなかった。猪や鹿などが、落ち葉を掘り返しながらブナの実やドングリを拾っているのだ。積み上げた落ち葉の山には雪がかかっていない。先程まで猪が仕事をしていたのかも知れない。獣がこちらをみていると目玉が光るはずとあたりに電灯の光を当ててみる。気温が低いので懐中電灯の明かりはしだいに弱くなってきた。「オオッ、懐中電灯よ、夜明けまで持ちこたえていてくれ」・・・。

hinode1  息をきらして登っていくと、やがて東の空の山なみの奥の水平線が金色に輝きはじめた。西空を振り返れば暗い闇で星がまたたいている。夜の世界から昼の世界に変わる自然のダイナミックな営みが始まるのだ。この時に黄金の輝きを発するのだ。自然界に生きるすべての動物たちは皆この瞬間を固唾を呑んで見つめているのだろうか。
 
チチチッと小鳥の声が聞こえた。しばらくするとキョッキョッと甲高い声が響いた。これはキツツキだ。今、この瞬間が20世紀最後の年の始まりと・・・。 ん・・・自然界の動物たちには関係ない話か。

 不況だ、貸し渋りだ、倒産だ。そんな話題は人間の世界だけなんだ。人間世界はマネーゲームに浸り、騙したり、騙されたりしながら自然界を破壊している。本来の姿を見失っているのではないだろうか。地球温暖化現象が証明している。自ら生存できない地球にしつつある。

 自然界の凄さを目の当たりにすると、お金によって歪められていく人間の姿が見えるような気がする。今年は、どんな年になるのだろう。「自然回帰の年でありたい」思わず口をついて言葉が出た。
※1月2日、宮崎でスキーページを発信されている井上さんからmailが届きました。「1999年は20世紀最後の年ではありませんよ。21世紀は2001年からはじまるので来年も20世紀だよ」と。やー、うっかりしました。冷汗三斗です。そこで、文章を手直ししようとしましたが、その時には勘違いながらも思い込みが強かったものですから、訂正したら気の抜けたビールのような文章になりそうで、この注釈でカバーしたいと思います。みなさんも勘違いして読んでください。井上さんご指摘ありがとうございました。
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