(九州森林管理局発行「広報九州」掲載原稿)

「ちょっと一言」「都市と山村の交流」
やまめの里 秋本 治

 九州背梁山地の向坂山から扇山にかけての稜線伝いに霧立越と呼ぶ杣道が続いている。霧立越はかつて椎葉村から蘇陽町馬見原まで馬の背で物資を運んだ駄賃付けの道である。

 総延長は40`にも及ぶが標高の高い尾根伝いの部分12`をエコ・ツーリズムとしてトレッキングに活用させて頂いている。付近一帯はブナを主体とした天然林で、新緑や紅葉の季節には登山者も多くなった。

 私たちは、五ケ瀬と椎葉の若者たちで「霧立越の歴史と自然を考える会」を組織し、霧立越インストラクターと称してガイドをしている。

 2万3千歩約6時間の行程は、尾根伝いに楽に歩けるコースとはいえ、そこは人の生活圏から外れた多様な動物の生息圏である。マムシも出没し危険も伴う。

 インストラクターは、救急薬や無線機などを携行し、危険に対しての対策や注意を促しながら高山植物の説明や霧立越にまつわる歴史などを案内する。特に、持ち出さない持ち込まないの原則を踏まえて山のナマーの啓発啓蒙も重要な活動の一つだ。

 このような自然体験型ツーリズムは、国民の自然への理解や保健休養の場として重要な役割を果たしていると思う。

 山村の疲弊と森林荒廃は表裏一体だ。自然体験の活用は都市と山村の交流を活性化させ、山村に経済効果をもたらす。 豊かな自然を持つ国有林では、こうした自然の活用を積極的に推進して頂きたいものである。

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