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宮崎県物産振興センターに求められるもの
98.5.30
社団法人宮崎県物産振興センター
理事 秋本 治
以下の文章は、5月11日に宮崎県物産振興センターから九州通商産業局に提出した「中小企業にとって役立つコーディネート活動を実践する上で有効な工夫、ノウハウ等について」のテーマで書いた小論文です。
1.はじめに
宮崎県は、豊かな自然と悠久の歴史を持ち、古代より長い年月をかけて農林水産物をはじめとするさまざまな地域の産品や工芸品等を育ててきた。
このような、くらしと風土によって育まれた地域の産品や匠の技による工芸品は、地場産業の核となり地域の文化やアイデンティティを形成している。
ところが、近年の都市文明は、豊かなくらしを実現したが、反面、社会環境、経済環境に大きな変革を起こした。経済の国際化は、地域の物産や地場産業の存立基盤を揺るがし、消費の冷え込みやデフレ傾向は深刻な構造不況を誘発している。
地域の物産を国際競争力を持つ商品に高め、物産に関わる中小企業、零細企業を地場産業の担い手として、再び足腰の強い産業に発展させるためには、商品開発技術や市場情報の支援を積極的に行うことが望まれている。
このほど設立された社団法人宮崎県物産振興センターでは、こうした地場産品の販路開拓、需要の拡大、商品開発や改良等の支援を積極的に行うこととしている。
2.物産振興センターに求められるコーディネート機能
行政では、これまで地場産品の商品開発技術や市場情報の支援を行うために、工業試験場、農業試験場、水産試験場、畜産試験場、などあらゆる研究開発施設の設置や技術者等を養成してきたところであるが、こうした施設は、業種別、業界別に存在しているため、機材の稼働率も低く、地場産品にかかわる中小企業が等しくその施設や機能を有効に活用できる環境には至っていない。
物産振興センターでは、このような業種や業界の垣根を取り払い、流通業界や商品開発の試験研究機関、更には企画会社、デザイナー、商品開発に優れたノウハウをもつ個人等のネットワークを構築し、これらをコーディネートする機能が求められる。
3.商品開発のためのコーデイネートの工夫
このため、次のようなコーデイネートシステムを構築することが考えられる。
@.物産振興センターに部会を設置する
物産の開発支援等の目的を持つ工業試験場、農業試験場、水産試験場、畜産試験場、経済連工場、大学の研究室などの試験研究機関やデザイン倶楽部、工業倶楽部、民間の企画会社など各専門分野の担当者で構成する部会を設立する。
A.ネットワーク部会会員のデータベース化
部会会員の研究開発施設の概略と使用できる機材の種類並びに専門職の人材について登録する。
B.会員の商品データーベース化
物産振興センター会員の商品リストと商品の製造行程の概略や特徴と商品を製造又は加工する上での課題について登録する。
C.ネットワーク部会では、物産振興センター会員の商品データーベースから求評会を開催して、開発、改良、助言その他支援可能な商品をリストアップする。
D.物産振興センター会員は、自社商品の開発、改良、助言その他支援についてネットワーク部会員のデータベースから目的に合致した施設や人材の紹介を受ける。
E.物産振興センターは、ネットワーク部会員に対して物産振興センター会員の商品の開発改良、助言その他の支援について一定額の費用負担を行う。
このようにして、物産振興センターが会員とネットワーク部会をコディネートすることにより、より有効な地場産品の販路開拓、需要の拡大、商品開発や改良等の支援を行うことができると思う。
4.課題や問題点の対策
コーディネート事業の課題や問題点は、
@.ネットワーク部会の協力態勢がとれるかどうか
A.会員企業の積極的な活用があるかどうか。
B.支援できない企業からの不満が出ないか。
などである。
このためには、
a.研修会や情報交換の場をつくり、刺激しあうこと。
b.会員とネットワーク部会からの情報収集と情報の共有をはかること
c.コーディネーターのスタンスを明確にすること
などが考えられる。
5.研修会や情報交換の場をつくり、刺激しあう。
宮崎の物産のあり方などをテーマにしたフォーラムやシンポジウムを開催する。
6.会員とネットワーク部会からの情報収集と情報の共有をはかる。
会員からの情報、市場からの情報、行政からの情報、ネットワーク会員の情報、これらの情報を共有する工夫が必要である。このためには、ネットワークかわらばんなど会員向けのインターネットによる情報の受発信システムを構築する。とりあえずはFAXで行う。
7.コーディネーターのスタンス
セカンドランナーの育成
本来、企業はすべて自前で商品の企画や技術開発を行い、販売ルートを開拓し、営々と企業努力を重ねて成長することが基本である。こうしたトップランナーの企業はそれぞれの業種に存在する。トップランナーは、独自で商品開発を行い、独自で販売ルートを切り開き、多くのノウハウを積み上げる力を持っている。物産センターの役割は、セカンドランナー以下の部分をどうやってトップランナーに近づけるか、育てるかということも重要である。
また、会員企業には、同業者も多いことから、特定業者の商品開発にばかり比重をかければ、競合企業からの不満もでる。てきるだけ同様な商品全体のレベルアップについての支援態勢をとることが求められる。