五ケ瀬町鞍岡波帰に伝わる盆踊り


盆踊りの種類

1.新ばやり
  太鼓の調子「ドン・カッコ・ドン・カッコ・ドンカラカッコ・カッコカッコ・ドンカラカッコカ」繰り返し。

2.サエキ音頭
  太鼓の調子「トン・トン・トン」繰り返し。
  囃子「ヨヤナー」「ソウカイナー、ソウカイナー」「イヤコラドッコイ」

3.タカナベ音頭
  太鼓の調子「トン・トン・カラカッコ・カッコカ」繰り返し。
  囃子「ヨイトサー、ヨイトサー」「どうでも音頭さんがやり手じゃのう」

4.オマチ踊り
  太鼓の調子「トン・トン・トン」(サエキ音頭よりゆっくり)
  囃子「オイチゴケジヨ、ヤットカカエタ」

5.アミ引き踊り
  太鼓の調子「トン・トン・カラカッコ・カーッコカ」繰り返し。
  囃子「エーナー、エーナ、ノ、チョイトサッサ」「カカッタゴタル、ジットヒケ、ヤー」「トレター、トレター、マァタトレター」


盆踊りの歌詞

●アミ引き音頭

この瀬、よい瀬よ、三幅につもる
  つもる三幅に、パラリと投げた
イダが、三ごん、エノハが五こん(※イダ=ウグイ、エノハ=ヤマメの意)
  イダとエノハで、八こんとれた
生で、やろかな、酢かけてやろか
  生じゃ食われぬ、酢と醤油かけて
さあさ、これから、音頭が変る
  音頭かわれば、踊りも変る
さきの、音頭さん、ところはどこか
  声もようたつ、字もよくわかる
さきの、お茶を、呑むひまに
  わしがちょいとの、口説きを入れる

おどり、はじめは、7月7日
  もはややめごろ、あがりごろ
盆の、ござれば、先祖もござる
  先祖ござれば、花おどり
盆にゃ、おどるなら、しなよくおどれ
  しなのよい娘を、嫁にとる
唄は、歌いたし、唄の数知らず
  大根畠の、かれがやし
盆にゃ、踊り子に、金の輪入れて
  入れておどらせ、見とござる
さあさ、よいよい、よいことよいが
  よいも抱いたか、まだ出会わぬか
皆んな、唄おや、亭主も客も
  亭主唄わにゃ、唄われませぬ
切れた、切れたよ、唄の音が切れた
  またも唄わにゃ、唄われませぬ
盆の、13日に、おどれぬ人は
  腹にゃ七月、子がござる



●小崎押し入り口説き

野を越え、山越え、笠部を越えて
  風も静かな、この鞍岡の
さても、恐ろし、押し入りばなし
  高橋通りて、丁字に泊まる
見れば、3人、侍仕度
  二十、四〜五のが、かしらと見ゆる
丁字、立つときゃ、6日の朝よ
  駄賃草切り、会うごと立ちて
馬を、のけねば、切るぞというて
  牛をのけねば、切るぞというて
たんだ、急いで、舟郷谷よ
  またも急いで、本屋敷について
またも、急いで、仲塔村よ
  急ぐ峠に、小崎の村よ
見れば、構える、庄屋の庭に
  紙を広げて、銭干しなさる
小崎、村にと、押し入りしたが
  銭かと思えば、葛粉でござる
銭が、なければ、ともきり丸と
  名前ついたる、刀を奪い
小崎、村をば、立ち帰りたが
  帰り道には、財木村の
金の、山にと、いう所にて
  オサモ押さえて、髪切り落とし
騒ぎ、たてるな、あと追い来るな
  この火消ゆるまで、出ることならぬ
ひゃくめ(百匁)、ろうそく、二本もたてて
  越えたところは、板木の村よ
急ぎ、隠れる、牛落しの岩や
  御上言葉に、手捕て出せと
強(こわ)手、新手の、村人たちに
  手強く向う、悪人なれど
己が、悪事の、報いがために
  腹の虫起きて、相果てたるが
調べ、受くるは、榧の木谷で
  与一墓とて、今あるなれど
  悪い事など、なしてはならぬ



●おさわ口説

花の、延岡、柳沢町の
  米屋なされる、庄左衛門の
1人、娘の、おさわというて
  おさわもとより、信心な生まれ
親の、悪心、直すがために
  神にゃ大願、仏に寄進
米良の、児原の、お稲荷様に
  願もたてたが、大願たてた
立てた、願なら、ほどかにゃならぬ
  同行すすめて、10人できた
おさわ、かたりて、11人よ
  明日は日もよい、参ろじゃないか
そこで、おさわが、仕度をなさる
  下にきるのは、ちりめん肌着
上に、着るのは、もえぎの浴衣
  帯ははやりの、当世すじで
三重に、まわして、やぐらで止めて
  髪の結いぶり、天竺牡丹
色は、鴉(カラス)の、若羽の色
  足に白足袋、八つ緒の雪駄
立てば、芍薬、座れば牡丹
  歩く姿は、夏百合の花
そこで、おさわは、ふた親様に
  お暇願うて、旅立ちなさる
日数、数えて,きじのに着いて
  たんだ急いで、大河内に着いて
またも急いで、児原に着いた
  米良の、児原の、百間橋は
不浄も、嫌えば、悪事も嫌う
  悪事ある人、渡りはきらぬ
同行、十人、皆渡りたが
  おさわ1人が、渡りはきらぬ
同行、十人、皆聞きなされ
  わしが親様、米屋でござる。
わしが、親様、ふた桝つかい
  手前とるのは、金盤(検印)桝よ
人に、やるのは、七合桝よ
  チキリ秤は、読みこしなさる
帖に、つけたは、つけこしなさる
  それが報いで、百間橋の
橋の、大幅、糸筋となり
  橋の欄干、大蛇となりて
下は、血の池、血の波がたつ
  親の報いで、こうなりました
同行、十人、皆口々に
  おさわ手をやれ、お手引き渡す
同行、皆様、お参りなされ
  親の報いで、渡りはきらぬ
同行、国許、帰られたれば
  ここの仔細を、庄左衛門に
話し、給えと、小石を拾い
  両の袂に、しっかり入れて
抱いた、袂で、分れを告げて
  下の大川、身を投げなさる
親の、悪事の、報いのために
  1人娘の、信心さえも
神にゃ、届かず、仏もきかず
  娘死んだる、その哀れさは
  さても恐ろし、悪事の報い



●おくま口説

国は、どこかと、細かに聞けば
  京の室町、イツヤの娘
イツヤ、娘に、おくまというて
  おくまもとより、信心な生まれ
神にゃ、大願、仏にゃ寄進
  お伊勢さまにも、大願たてた
立てた、願なら、ほどかにゃならぬ
  親にびくびく、お暇を願う
わしが、音頭は、街道で拾うた
  拾うた音頭で、合うこと知れぬ
合わぬ、ところは、入れ子を頼む
  入れて踊らせ、のう見とござる
音頭、とる子が、橋から落ちて
  橋の下から、泣き音頭とる
もしも、親から、返事がないか
  返事なけらにゃ、夜の間に発つか
道の、三里も、大橋小橋
  三度急いで、オバタに着いた
オバタ、街道で、お宿を願う
  夜具のよいこと、ならびにゃないが
女、心か、えいなものか
  おくまもとより、正直者で
肌に、付けたる、四十両の金を
  宿の亭主に、しっかと預け
宿の、亭主が、悪人ならば
  おくま殺して、金取る企み
夜の、ご馳走、親よりましで
  奥の納戸に、おくまを寝せて
夜中、まなかに、亭主が起きて
  おくま殺すが、覚悟はよいか
おくま、殺すが,いうことないか
  そこでおくまは、それ聞くよりも
待ちて、くだされ、お亭主様よ
  金が欲しけりゃ、四十両の金を
又も,欲しくば、父上様に
  ひなかひきたて、取引進上
言えど、亭主は、聞けわけもなく
  棚の黒鞘、すらりと抜いで
おくまの、身体を、七箇所切りて
  おくまの身体を、つづらに詰めて
御用、油と、いうて詰めおいた
  これがお江戸に、知れねばよいが
これが、お江戸に、さらりと知れた
  お江戸方から、捕っ手が見えた
一家、親類、七従弟まで
  向う三軒、両隣まで
捕りて、しまいて、四十八人の
  そこで代官、おさばきなさる
おくま、兄弟、知恵持なれば
  申し上げます、代官様よ
四十、八人、皆殺しても
  おくま身体は、返りもしない
おくま、身体に、1人きりで
  成敗なしてと、お願いすれば
代官、様の、おさばきありて
  道の三方辻に、穴をば掘りて
おくま、殺した、亭主の身体
  首を出しては,生き埋めなさる
竹の、鋸を、こしらえおきて
  往く人返る人、皆引くように
高札、立つるも、悪事の報い
  竹の鋸を、手で挽くよりも
  心に染みる、悪事でござる。

さあさ、出せ出せ、七つも八も
  出してお客の、目を覚ませ
揃うた、揃うたよ、踊り子が揃た
  秋の出穂よりゃ、まだ揃うた


以上の他に
●平左口説
●鈴木主水
などの長い歌詞があります。