平成11年度第2回「地域興しマイスター・フォーラム」
参加リポート
平成11年11月21日
やまめの里 秋本 治
日時:平成11年11月17日〜19日
フォーラム会場 青森県:八戸市プラザホテル
視察地 青森県:名川町、青森市三内丸山遺跡
視察地
T.名川町
名川町は青森県の南東端にあり、年平均気温8.8°C、年降雪量108a(共に平成8年)の気候で、農業を基幹産業とする広さ83平方km、人口9,800人、一般会計の予算規模は52億(平成9年度)である。平成5年に国の第1次グリーンツーリズム推進モデル町に指定された。(たしか本県五ケ瀬町とともに全国25箇所が指定されたと思う)
指定を受けた名川町は、青森県下1番のサクランボの生産地であることからサクランボをテーマに第5次振興計画を策定、「果樹とグリーンツーリズムの町」として町づくりに取り組んでいる。
グリーンツーリズム関連施設は、
1.宿泊型体験実習館「チェリウス」(宿泊定員52人)
事業費563,243千円(農業構造改善事業:需要創造型)
利用者数46,869人(平成10年度)
運営:町直営
2.名川チェリーセンター(特産品販売施設)
事業費107,912千円(平成3年〜平成9年町単むつ小川原原発関連助成)
売上250,000千円(平成11年度)
運営:名川チェリーセンター101人会
3.ドライフラワーセンター
事業費35,000千円(原子燃料サイクル事業推進特別対策事業)
4.スパーク名川(ゲートボール等のスポーツセンター)
事業費331,000千円
5.南部芸能伝承館(南部手踊り発祥の地)
事業費632,120千円
などがある。
〇名川チェリーセンター
ここで最も注目されるのは、「名川チェリーセンター」である。昭和61年に農家の婦人たちが特産品研究会を組織して特産の梅やリンゴのジュース加工を開発した。これを契機に町内各地で同様な特産品研究会が発足し、数々の加工品を開発したが販売施設が無かった。そこで、町は、電源開発関係の補助を活用して平成3年に「名川チェリーセンター」を建設した。
この時この事業と平行して特産品研究会の婦人たちは、「名川チェリーセンター101人会」を組織した。会は、出資金3万円、運営資金2万円、計5万円を入会金として募集し当初86人で立ち上げた。その後、目標の100人となったが現在では参加希望者が増えているが100人を限度とすることにより品質を高めているという。
販売商品は、特産のサクランボをはじめリンゴ、ブドウ、梅、柿、梨、桃、プラムなどの果樹とその加工品を主軸にしてその他の農産物と加工品、山菜、キノコ、山野草まで商品は実に100種を超える。加工は、各自でも行うが、公営加工施設の機械を使用して自由にわが家のブランドをつくっている。サクランボの季節には、1日の売上が3,000千円を超えるという。
この販売施設は、最近の公営による物産販売施設のような豪華金ぴかの施設ではない。規模は全く異なるが商品の展示や構成が築地の市場を思わせるようなイメージである。一人分の展示スペースはプラスチック製籠のコンテナ2台として、上段と下段、或いは横2列といった具合に100人分のコンテナが整然と配置されている。そして半年に一回くじ引きで配置場所を変更しているという。
商品の種類や値段は各自が自由に設定するフリーマーケット方式で、商品の入れ換えもすべて個人の責任に於いて行われる。本県各地に農家の無人販売施設が見受けられるが、ややこれに近い方式である。
ここで注目されるのは、販売システムである。商品はすべて個人のバーコードによって管理され、商品1個毎に商品名と値段、生産者の住所、氏名、電話番号等を記録した統一様式のカードが付けられており、レジではこのカードを読み取り、そのカードの一部をミシン目から切り取って保存し、これに基づいて清算業務を行う。
販売に当たるスタッフは、100人の会員が当番で数人ずつ交代でこれに当たる。月に1日か2日出勤するだけでわが家の生産物が年中販売できることになる。したがって人件費ゼロの運営である。
100人という限定会員数も成功の大きな要因と思われる。例えば数十人では商品のアイテムが少なくなり小規模でマーケットの魅力に乏しいし、数百人にもなると管理が難しくなりそうだし、商品の品質低下を招くかも知れない。町の生産者の規模や商品アイテムから考えて100人としたのは卓見だと思う。また、100人の生産者間で競争意識が高まり、商品の開発や工夫の跡が見える。したがって品質も高い。設立当初から一人の脱落者もなく、むしろ今では入会したいという希望者が増え、第二のチェリーセンター設立論も出ているという。
本県の無人販売施設の場合、商品の管理が出来ないことと、いたずらなどで70%程度の回収率と聞いた。この種の無人販売の場合、衛生管理や販売施設に問題があり、極めて小さい施設のためマーケット性に欠ける。また、通常の物産販売では、各個人がそれぞれ出掛けて販売するケースが多いが労働の稼働率が悪く無駄が多い。公営の物産施設では、販売手数料と一部公費負担によって人件費を賄うケースもあるが、フリーマーケットのような機動性がなく生産者の意欲が高まるシステムでもない。
このようなことから、名川町のチェリーセンターの民活による運営は、本県の農家や物産販売のあり方に重要なヒントを与えてくれるものである。
〇名川町のクリーンツーリズム
名川町では、町内の専業農家兼業農家25世帯で「ながわホームスティ連絡協議会」を設立し、グリーンツーリズム推進モデル事業として中高生の農業体験修学旅行を中心にファームスティに取り組んでいる。
体験内容は、リンゴの受粉作業、袋掛け作業、収穫作業など農家の作業を体験させるものである。募集は、南郷村、三戸町など周辺の4町村と共同で広域的に旅行代理店を通じて行う。日程は、兼業農家も多いため金土日の間に行うこととして1泊2日、費用は17,000円である。その内5,000円は、秋の収穫の際収穫物を宅配する費用としている。参加校の地域は、京都、大阪、神奈川などが多い。
当初は一般にも呼びかけたが参加者が少ないので修学旅行誘致に乗り出した。修学旅行は、ホームスティだけが目的ではなく、いくつもの修学旅行の行程の一部に組み込まれたもので旅行コースの一部となっている。
入村式では「なんでこんなことをしなければならないの」といささか不機嫌な生徒もいるが、翌日になると涙の別れがあるという。また、以前修学旅行に訪れて農業体験した生徒が社会人になって家族を伴って訪問し、家族ぐるみの交際に発展したケースもあるという。今後は、そば打ち体験なども予定しているそうである。
体験農業は、都市の市民に呼びかけてもなかなか集まらないという壁があるが修学旅行に視点を当てたことがよかったものと思う。参考にすべきことである。
また、青森県では「おあもりグリーンツーリズム」として県内全域のグリーンツーリズム関係施設を紹介した本やマップ、パンフレット類などグリーンツーリズの情報が非常に充実していることに驚かされた。
U.青森市三内丸山遺跡
三内丸山遺跡は、古くから土器や土偶が出土して遺跡であることがわかっていたが、平成5年、青森県総合運動公園拡張整備事業で新野球場建設中に、この遺跡が約5,500年〜4,000年前の縄文時代の日本最大級の集落跡であることがわかり、急きょ野球場の建設を中止して、遺跡の保存と活用を決定した。平成9年には国の史跡として指定され、建物の復元や出土遺物、遺構の公開が行われている。
この遺跡は、毎日9時、10時、11時と1時間間隔でボランティアガイドが遺跡内を案内している。通常1時間のガイドである。もちろん定時以外にも受付けて案内時間も要望に応えられるようになっている。ここでは、場内の遺跡の内容もさることながらボランティアガイドの充実ぶりに驚かされた。
この遺跡は、入場無料である。駐車場もガイドもすべて無料である。十数人のボランティアガイドが待機して、次々に見学者を遺跡の見学コースに案内してスタートしている。解説も考古学の豊富な知識をもって説明され、なかなかのものである。これだけの施設でガイド付きで無料とは大したものだと感心した。
このシステムは、ボランティアを募集して登録し「ボランティアガイド[三内丸山応援隊]」を組織して行われている。ホランティアは広く県外からも参加されているという。原則として午前の部、午後の部に分けて出勤してもらうので弁当も出さないという。通勤の交通費のみの支給だそうである。なんでもお金お金で動く時代に実に清々しいものを感じた。まさに「損して徳取れ」である。誇らしげに説明しながら案内するガイドの表情に心の豊かさを感じた。
V.フォーラムの講演について
講演は、テープで録音しているが、詳細については必要に応じて書き起こすことにする。
W.その他、交流会
フォーラムの夜は、八戸市内の居酒屋で熊本県のマイスターの皆さんとの交流会に参加した。席上、九州のマイスターの交流会を立ち上げようという意見になった。第1回は、熊本県が幹事県でということで大変盛り上がった。熊本は参加者も多かったが元気モンが多い。
以上